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サラリーマンの雇用と賃金は平等の時代から選別の時代へ|「非情の常時リストラ」感想

      2015/12/26

リストラについての勉強するために読んだ本「非情の常時リストラ」の感想です。

特に日本の大企業の雇用と賃金が変化している現状が豊富な取材からよく理解できる本です。

サラリーマンの雇用と賃金は平等の時代から選別の時代へ

本書の内容を一言で表すキーワードは「選別」。

終身雇用と年功序列というシステムの中では、社員はみんな平等の待遇であった。

その企業は今、良い社員とそうでない社員をふるい分けて待遇に差をつける「選別」に舵を切っている。

その最も極端なあらわれがリストラ(解雇)です。

本書のタイトルである「常時リストラ」とは、一気に何百人もドカッと解雇するのではなく、毎年コンスタントに数十人ずつ解雇していくという方式です。

マスコミに取り上げられないなど、経営的にはとても合理的な方式ですが、社員としてはかなりコワイ…。

本書ではリストラの他に、採用時に行われる選別(主に学歴)と給与格差についても書かれています。

ジャーナリストの方が書いた本だからか、豊富な事例やインタビューから構成されているのでリアリティがありますね。

あらゆる段階で選別される社員

つまりリストラという何年かに一度起きるイベントだけで「選別」が行われているのではなく、会社員人生のあらゆる段階で”常時”選別が行われているということです。

  1. 入社の段階で学歴フィルターで選別され
  2. 入社してからも成果主義で選別され
  3. 中年になったらリストラで選別される(場合によっては常時リストラしている)

実はリストラの本ではない

私はこの本を「リストラ」について勉強するために購入したのですが、リストラだけを知りたい人には不向きかもしれません。

リストラについて書いているのは第1章だけで、あとは新卒採用についてとか、サラリーマンの賃金の格差についてなどについて書かれていますので。

ですからこの本はタイトルからリストラについて書かれた本だと誤解しがちですが、本当は大企業の雇用と賃金について書かれた本だと捉えたほうがよいと思います。

主に大企業のリストラ対象

本書には多くの実例やインタビューが掲載されていますが、どちらかというとパナソニックとかソニーをはじめとする大企業によった内容となっています。

給料が上がらないのは組合のせい?

「企業が内部留保をためこんで社員に給料として還元しないのはけしからん。組合がだらしないせいだ。」という記述がありましたが、これはちょっと? でした。

どちらかの肩をもつつもりはないですが、内部留保を増やすのはおそらく行く先の不透明性が昔よりも高い(つまりリスクが高い)からだと思います。

商売をしている外部環境の変化が激しくなっているということではないでしょうか。

「非情の常時リストラ」感想まとめ

本書は企業がみんないっしょの待遇の「平等の世界」から能力に応じて待遇を変える「選別の世界」に変わったことが豊富な事例からわかる内容となっています。

だから今、大企業の人事部で何が起きているのかを知るにはよい本です。

ただ、なぜ「選別の世界へと転換したのか?」については本質的な回答は今一つ読み取れませんでした。

大前提として日本企業がグローバルな熾烈な競争にさらされ、あんまり儲からなくなり、全員を抱えきれなくなったということが背景にあるとは思います。

ですがもう一歩踏み込んで、

  • 年功序列・終身雇用の何がダメで、いまどうなろうとしているのか?
  • 選別されないためにはどうすればよいのか?

という点について今後は掘り下げていきたいと思いました。

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